国防予算

アメリカの国防予算成立過程と議会の役割
渡部 恒雄 (CSIS戦略国際問題研究所客員研究員)
 

 アメリカ連邦政府予算の中でも、巨額で複雑な国防予算(2000年度の予算は2680億ドル)を審議することは、国民に対する議会のアカウンタビリティー(説明責任)の大きな課題の1つである。現在までの議会の取り組みの結果、他の民主国家や過去のアメリカの予算策定過程と比較すれば、かなりの透明性がその努力により確保されてきた。

 議会の国防予算審議能力への制約は、(1)軍・行政府における軍事機密保持の壁、(2)専門的な知識の欠如、(3)委員会における力の分散化、(4)議員の地元利害の優先、などである。ベトナム戦争の敗北において、行政府の政策分析と評価の誤りが明確であったにもかかわらず、議会が代案を出せなかったというアメリカ国民の経験は、議会のアカウンタビリティーへの期待を高め、議会自身の能力向上とスタッフの拡充に向かうことになった。現在、国防予算を審議するアメリカの議会の機能は、1974年の情報公開法(Freedom of Information Act)と議会予算統制法(Congressional Budget & Impoundment Act)以来、飛躍的に向上している。

 議会予算統制法は、上下両院にはじめて、予算委員会(Budget Committee)を設置し、それまで複数の委員会への機能の分散化によりひきおこされていた歳入と歳出をめぐる問題点を解消し、歳出における優先順位を決定する機能をもたせた。政策の優先順位を決定するためには、より専門的な知識が必要となるため、議会予算局(Congressional Budget Office, CBO)を設置して、専門的な分析に基づき、提言を行なうことにし、議会に所属する会計検査院(GeneralAccounting Office, GAO)の政策評価機能を強化し、特定の分野で予算やプログラムに関係した情報を提出して議会の委員会を補佐する役目を与えている。

 アメリカの国防予算策定過程の透明性が確保される大きな理由は、国防省と議会、あるいは議会内での委員会同士の利益が対立、競合するためにそれぞれが専門家を擁し、予算策定、開発、調達などの段階で深く関わっていることにある。たとえば、政治家の地元利益誘導(ポークバレル)という国防予算への議会の関与についての否定的な面ですら、その過程がよく有権者に見えるために、この問題は常に世論の批判には上がるが現時点では深刻な問題に至っていないように思われる。

この論文は1999年度東京財団とPRANJとの共同プロジェクトです.
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