ブッシュ政権の外交政策

ブッシュ新政権の外交政策
向江龍治 (ニューヨーク大学客員助教授)
 
 アメリカ史上まれに見る接戦の末、第43代大統領となったブッシュ前テキサス州知事は、その外交未経験が危ぶまれたため、チェイニー元国防長官(ブッシュ政権)を副大統領に、パウエル元統合参謀本部議長(同政権)を国務長官に、ラムズフェルド元国防長官(フォード政権)を国防長官に選び、外交政策基盤をベテランで固め、国民の不安を和らげた。パウエル氏と女性のライス国家安全保障担当補佐官がともに黒人なのは、その9割がゴアに投票した黒人層への懐柔ともとれる。

 ライス補佐官によれば、ブッシュ外交の基本方針は、自由貿易促進のほかに次の4点である。 第1に、アメリカ軍の使命を戦争抑止と国益保護のための戦争遂行に限る。国益とは、アメリカ本土の防衛と米国が戦略的利害を有する欧州、東アジア、中東、米州の防衛である。人道的介入や平和維持への参加は国益外なのでアメリカ軍投入は最小限とする。

  第2に同盟国を重視しつつ、国際的平和と繁栄の負担を分担させる。

  第3に、対中国、対ロシア政策に焦点を置く。中国とは経済関係を維持しつつも、クリントンのいう戦略上のパートナーではなく、競争者として同国を扱い、台湾との防衛関係を強める。対ロでは、アメリカの計画する本土ミサイル防衛(NMD)を受け入れさせ、拒否の場合は一方的に開発・展開し、それにより同盟国も保護する。

  最後にイラクや北朝鮮などのいわゆる「ならず者」体制に対して、前政権と異なり、断固たる対応をとる。対イラクでは、大量破壊兵器監視を再開し、制裁を維持、反体制勢力への支援を強める。北朝鮮は金正日の言葉よりも行動を見極めて、クリントンのように簡単に信用しない。

  ブッシュ外交は、軍事力行使の基準に見られるように、理想主義的というよりも「現実主義的」である。また、包括的核実験禁止条約や地球温暖化防止のための京都議定書に反対するように、多国間主義的というよりは一国主義的である。そして同外交は、エイズ、難民、環境、テロ、内戦といった深刻化する地球的諸問題を除外する形で国益を定義するように、前向きというより後向きである。

  軍事的・経済的超大国の米国が、保守派レトリックの域を越えてこのような「現実主義」・一国主義・後向き外交を展開するとすれば、その結果として、日本を含む先進諸国のグローバルな「責任」と「負担」の増大と、途上国世界のより大きな「自己責任」と「自己負担」が求められることになるだろう。

この論文は1999年度東京財団とPRANJとの共同プロジェクトです.
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