安全保障政策:スウェ−デンと日本の接点
池上雅子 ストックホルム大学アジア太平洋研究所助教授
スウェーデンと日本には、技術立国、同質性の高い社会、国連重視外交など意外に符合
点が多い。安全保障政策面でも、スウェーデンが非同盟中立主義を掲げながら、実際には
冷戦中から事実上NATO友好国として機能してきた点は、憲法の高邁な理念と日米安保協
力の現実という安全保障政策の二重性をもつ日本と妙に符合する。
現在、スウェーデンと日本は、共に従来の一国中心主義的防衛政策と新たな地域安全保
障のあり方との兼ね合いを模索している。両国に状況変化をもたらした共通要因は、冷戦
終結による安全保障情勢の変化とグローバリゼーションの進行(軍事研究開発生産の国際
化も含む)であり、今後の安全保障のあり方は国や地域の差異を超えて収斂していくとも
考えられる。すなわち、防衛装備の研究開発生産の国際化をはじめ、地域紛争の予防・解
決への多国間協力、国際的軍縮軍備管理の強化などは、ヨーロッパでもアジア太平洋でも
同様に必要となろう。それはいわば、新たな地域・世界秩序形成の模索と並行した作業と
なる。統合ヨーロッパでは現在、意思決定における代表性、たとえば人口や経済規模の大
きい大国優位か、小国の意思も十分に反映されるのかという数の原理がひとつの争点とな
っている。
アジア太平洋地域では、地域内信頼醸成の点ではヨーロッパに数十年の遅れをとってい
ると考えられ、現在も力の原理が支配的である。スウェーデンの場合、ヨーロッパ安全保
障のあるべき構想はかなり明確であり、その構想実現に向けて、平和執行部隊強化や緊急
展開危機管理部隊の創設案など、思い切った政策も憚らない。
これに対し日本の場合、地域内危機への軍事的対応を主軸とした日米安全保障協力強化
には熱心だが、アジア太平洋の平和と安全のための将来構想が明確でなく、結果的に「力
の原理」への追随に終始している。地域内危機への対処能力の整備は無論重要だが、それ
だけでは力の対決による緊張を生じてしまう。アジア太平洋地域の平和と安全の将来構想
を描いて、信頼醸成や紛争予防・解決のさまざまな方策を日本の新しい安全保障政策議論
の課題に載せていくことが重要であろう。
安全保障の問題状況がますますグロ−バル化するなかで、一国中心主義的安全保障政策
はもはや選択肢に入らない。しかし、とかく「力と数」に押される冷戦後の新たなパワ
−・ポリティックスにあって、スウェーデン、日本の両国がそれぞれに掲げていた「平和
国家」としての価値理念を失わずに、他国・地域との安全保障協力をいかに築けるか否
か、その力量が問われている。
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