| 牧原氏の提言に反論する(2002年3月19日投稿)
高橋 徹 :会社員(特殊法人出向中)
相続税をうんと高くすれば社会が活性化する、という主張はよく聞かれるもので
す。牧原さんは弁護士でいらっしゃいますが、私も裁判官の友人からも同じ主張を聞
かされたことがあります。法律家的な公平の観念からすると、生まれながらの経済格
差は許し難いものなのでしょうか。文章中には明示されていませんが、所得税の累進
課税が努力が報われない一因だと主張していることから、所得税は廃止ないしフラッ
ト化を望んでおられるのだと思います。つまり、所得税を軽く、相続税をうんと重く
しろ、という主張です。
人はなぜ働き、稼ぐのか。消費と貯蓄のためです。貯蓄は将来の消費のためであ
り、将来の消費には自分の消費と遺産形成(=相続人の消費)が含まれます。貯蓄の
理由に遺産形成が大きな位置を占めているのは多くの調査が示しています。相続税率
を100%にしてしまうと所得税の最高限界税率を100%にするのと同じ効果、あ
る程度稼ぐとあとは馬鹿らしくて働く気をなくす社会になります。所得税の累進課税
と同じく、相続税も労働意欲を削いでしまうのです。人生のスタート時点における経
済格差を認めないことは、努力に応じて報われる社会の根底を崩すという逆説的な結
果につながると言ってもよいでしょう。
税制度の整合性の視点から見ると、相続税は所得税・贈与税の補完として存在して
いるのであり、相続税と所得税の最高税率が極端に違うと課税を避けるためにゆがみ
が生じます。流動性の高い金融資産(銀行預金、上場株、国債、社債など)は自分が
死んだら無価値になるわけですから、保有するわけにはいかない。これらは個人は誰
も持たなくなって、すべて(永遠の命を持つ)法人所有に変わるでしょう。個人はど
うするか?牧原案は流動性のない中小企業株は100%課税から除外するというので
すから、資産管理のペーパー会社を作り、必要に応じてそこから給与ないし配当を受
ける形をとります。そしてペーパー会社の株を子供に相続させるのです。
所得の把握が完璧で、キャピタルゲインが実現されなくても課税されるような社会
であれば、相続税は不要です。それが実務的に不可能であるからこそ補完的に相続税
があるのだということを忘れてはいけません。社会の活力維持には相続税は抑制的で
あるべきです。
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