| 反論に対して(2002年3月21日投稿)
牧原 秀樹 :弁護士 Hogan & Hartson LLP
反論を頂きましてありがとうございます。税制というのは
国家や人の社会生活の根本にかかわり、将来に影響に出る話
ですので、本来であれば日本中でみんなが真剣に考え、
決めていかなくてはならない問題だと思っています。
まず、大前提にあるのは、私自身は個人の経済的利益などは
それほど関心がなく、むしろ愛する祖国の状況に照らし、
この国が立ち直って、そして将来もやっていくにはどうしたら
よいか、という考えが根本にあります。私は、よく日本は
タイタニック号のようだと思っており、人にも言っています。
つまり、見かけは当時世界一とも言われたほど豪華なのですが
、10年前の氷山の衝突後も船内の人は、個人の既得権益などに
目を奪われたまま、そして、一見日常の生活は豪華なまま、船
全体は徐々にクライマックスに近づいているという状況です
既に船底に近い人は次々に飲み込まれていっています。
私は、決して経済学者ではないので、詳しい理論的な話は
そちらに任せたいと思いますが、沈没の最大の要因は、
歴史上最悪な膨大な財政赤字であり、またやはり世界最悪と
も言われる高齢化・少子化の急激な進行ではないかという
気がしております。つまり、単純に言っても、今の財政状況は
自転車操業、つまり借金を借金で返す状況に陥っており、
我々が普段見ている会社と同じ考えをとれば、回復の望みは
急激な収入の改善(つまりは大幅な税収増加、これにはスーパ
ーインフレのようなみかけのものも含まれるしれません)か、
あるいは資産の売却(政府株や資産)しかないように見えます。
また、今の状況であれば、最悪日本の貯蓄を全部チャラにすれば
まだ国家自身は浮いていられるとも言われています。もし、
他の素晴らしい解決策があれば、是非教えて頂きたいと思います。
これらの中で、最も健全な回復策はもちろん税収増(セットとなる
リストラ策は生易しいことではもはや債務を一掃する最大の要因にはなりえないで
しょうからここでは述べないこととしたいと思います)であることは異論がないと思
います。税収増には、いろいろな方法があり、それはまた専門家の方のご意見がある
でしょうからそれを待つこととして、やはり単純に考えると、課税ベースの拡大
か税率のアップが軸になるしかないように思います。ところで
ここで問題となってくるのが、少子化・高齢化でないかと思います。これらの具体
的予測については、国立社会保障・人口問題研究所が今年1月に発表した推計をご参
照頂くこととして、かなり深刻な状況にあることは間違いないところです。私が、
税制に問いたいのは、今までのような今後数年間を何とかする
というようなうわべだけのものではなく、こういう50年後、
あるいは100年後までも見据えたものにすべきということです。
そうでないと、今の最悪の財政状況や競争力の低下、学力の低下等々いろいろな問
題もあいまいって、たとえ今後数年は良好な状況が出たとしても、長い目で見たとき
にはいずれ国家自体が破綻してしまうのではないかということです。
誰もがハッピー(税金は払わない、努力しない、豪華な生活をする)と言う能天気
な状況は永遠には続きません。国民みんなが国家を立て直すべく負担をしないと、身
の回りの利益に目がとらわれるあまり、全体が沈んでしまって、
何の意味もなくなったと言うことになってしまうのではないかということです。
さて、ではこの負担は、誰がするかという問題が残ります。
それは、国民みんながするという構造にするのが筋であって
、そうでないと不平等ではないでしょうか?ただ、負担能力
の問題は残りますし、実際上の税収の問題からしても、
フラット税制などは無理ですし、同じくみんなの平等な負担を
ベースにしているようにみえる間接税の
アップは、不況下にはかえって傷口を広げる可能性(
消費の低下による不況の深化)があるので、エコノミスト
の友人なども軒並み反対をしております。法人税は、経済の
国際化の中でただでさえ国際的に高い水準の法人税を上げる
という選択肢はないでしょう。所得税は、そもそも所得の
ある人口が減っていくという中で、これに頼ることは
無理ですし、これを上げることはやはり消費の低下を招いて
経済の沈滞化につながる可能性があります。そうすると、
誰かが負担しなければならない負の部分は、死者が負担する
しかないのではないかというのが私の考えなのです。
もちろん、実際の手続をしたり、「入ってくると期待して
いたものが入ってこない」のは相続人ですので、感覚的には
「生きている者の負担」なのかもしれません。しかし、
それは、あくまで自分の手によらない「期待的」収入の
減少にすぎないのではないでしょうか。少なくとも、
今後生きていかなくてはならない者たちに直接の犠牲
を強いるより、国家の存続にとっては有益な選択肢なのでは
ないでしょうか。もちろん、誰も犠牲を払わずに、50年後、100年
後の人口統計を見つつ、国家の財政状況をきれいにする
方法があれば、こんなに素晴らしいことはないので、是非
教えて頂きたいと思います。
もちろん、相続税を100%にすれば、普通の人は、生前贈与
をするか、あるいはおっしゃるようなペーパー会社による
抜け道を考えるかもしれませんが、まず、生前贈与は大いに
結構でしょう。その他の抜け道については、今だって
同じようなもんなので、これは日本の優秀な税務当局の目は
そう簡単にごまかせないと信じています。いずれにしても、
これは枝葉の問題で、根本的な方針としては、上記の
通りです。また、例えば国家の事業や、学生の義援金制度、
失業対策基金、環境基金等々への寄付控除のシステムを
整えたり、個人の公益目的財団(もちろん、実際の運営の実勢有り)などによるシ
ステムの有効活用も考えるべきです。
なお、例えばアメリカを見ていると、優秀な移民が次々に
国家の形成に寄与しており、従来の白人の子どもは減っている
かもしれませんが、それを挽回するだけの次世代の形成が
なされています。ヨーロッパは、高い税金や社会保障を
負担する意思形成がなされていたり、移民もあったりも
するので、他国の相続税率はうんぬんの議論は、他の分野と
比べて不適切であり、日本固有の現在及び将来の状況を踏まえた
議論が必要だろうと思います。
個人の努力をきちんと評価するシステムの形成については、
おっしゃるとおり私の議論は、同じスタートラインに立つ
者たちの公平性の議論であり、遺産を残したいという側の
視点は少し優先度を下げております。生まれながらの不公平は、
人権的な議論ではなく、既得権益ある者は、それを守ろう
として全体の利益追求を怠るという発展途上国で見られがちな
マイナス面があること、及び日本はあまりに親の庇護が厚く、
例えば4年で社会を立て直した韓国や伸びつつある中国、あるいは
アメリカやヨーロッパなどの先進国と比べても、乳離れを
していないことが、結果として国家全体の競争力や忍耐や
努力といったことに影響していないか、という問題意識などが
ベースになっています。
私はまだ今後4、50年は生きなければならない世代なので、子孫により多くの遺産
を残すということが、どの程度個人のやる気に影響を与えるかについて理解が乏しい
かもしれません。それが、今後数十年生きなければならない世代の所得へより負担を
強いるということよりも社会全体の活性化を削ぐということならば、そういう
事の方がひょっとしたら正しいのかもしれません。それが、
生前贈与や制度の整備では到底カバーしきれないものである
ことがあるのかしれません。
いずれにしても、このままでいいとは到底思えませんので、
素晴らしい解決策についてご意見を頂けたらと思います。
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