日朝首脳会談

日朝首脳会談について(2002年9月20日転載)

愛知和男

歴史的な日朝首脳会談が終了しましたが これに関する私見を述べることにします。
まず私は小泉首相の訪朝決断を評価します。政治生命をかけた決断だったことは間違
いないからです。結果についてはまだ評価がさだまっていない向きもありますが私は
一定の評価に値すると感じています。
 
それはそれとしていくつかの点を指摘しておきたいと思います。
まず第一に小泉首相の決断の動機には 経済問題や構造改革全般にわたる行詰りから
くる政治的困難な状態を打開するために政治的な大きな賭けにでたということがな
かったかどうかということです。外交案件を国内の政治に利用しては断じてならない
ことは言うまでもありません。今後も外交案件を国内政治とからめて扱うことの決し
てないように求めます。同時に野党もこの問題に引きずられて 国内問題に対する取
り組みがおろそかにならないように さらにマスコミもこの問題に関する報道一色に
ならないように希望したいと思います。

ところで今回電撃的な日朝首脳会談が実現し しかも予想を越えて金正日主席が拉致
問題にたいして謝罪までするに及んだのはなぜかという点につき 私見を述べますと
 北朝鮮の再建のために 日本からできるだけ多くの援助を出させる必要性を韓国と
中国 とくに韓国が痛感し 金正日に強く働きかけたと思えてなりません。今の状態
のまま北朝鮮の再建を図ろうとすれば 韓国および中国にとっては膨大な負担になる
ことは明白だからです。なにはともあれ日本と国交正常化交渉を再開して 交渉のな
かで出来るだけ多額の金を日本に出させることをなにより優先すべきだと説得したの
ではないかと思います。
核の問題の優先度はそれほど高くなかったと思います。なぜなら北朝鮮は韓国や中国
に核を打ち込む可能性はほとんどないからです。さらに言えば中国にとっては北朝鮮
が核を保有しているとすれば対米戦略上むしろ有効だとすら考える可能性があるから
です。

日本にとっては拉致問題で多くの人がすでに死亡していたという事実が明らかにされ
たことは 衝撃的で家族の方々の悲しみは察するにあまりありますが
だからといって今回の首脳会談が失敗だったということにはならないと思います。こ
の厳然たる事実は首脳会談が実現したので明らかになったのであり さもなくばいつ
までも不明のままになっていたでしょう。事実が明らかになったからこそ これから
の問題として日朝間で取り上げることができるようになったのですから。
さらに拉致問題の事実がこのような悲惨なものであったから日朝間での国交正常化交
渉をはじめるべきではないという意見も多く出ているようですが それではどうした
らいいのか 交渉を始めなければ拉致問題の後始末もできないことになってしまいま
す。
尚 拉致問題についての世論の受け止め方の日本国内外での温度差の違いが際立って
いることも 頭においておく必要があると思います。日本人のナイーブさは世界で際
立っていると思います。

ところでこれから日本としてどのような姿勢で国交正常化交渉に臨むべきかという点
ですが 拉致問題に関する取り扱いはひとまず切り離して考えるとして 経済援助に
ついては 韓国 中国 特に中国の様子を注視しつつ 慎重に話を進めることが肝心
だと思います。対中国外交のカードに使う位の対応が必要だと思います。
核の問題は日本にとってはまさに対米外交上の課題です。日本だけのことだけ考えれ
ば北朝鮮が日本に直接核兵器を打ち込む可能性は低いと言わざるをえないからです。
日本に核を打ち込んだら日本経済は壊滅してしまい日本から取れるものも取れなく
なってしまいかねないからです。

アメリカは 北朝鮮が核を開発したりミサイルを輸出したりさらにテロを支援するな
ど国際社会に対する撹乱を策するのも その根底には貧困があって あらゆる脅迫手
段を使って援助を引き出そうとしているのだという認識があると思います。イラクな
どは石油が豊富ですから北朝鮮とは基本的な条件が違います。またイスラム教という
宗教の存在も北朝鮮とは違います。従ってアメリカとしては北朝鮮が貧困から脱出す
るために日本に少しでも多くの金を出させようと考えていると認識してこの問題に対
処する必要があると思います。やはり国際社会から日本に求められているのは金なの
だという現実を直視する必要があると思います。日本にはこれしか武器はないのです
から。