メディアの持つ力

メディアの持つ力(新聞社でのこと)」 (2001年11月27日投稿)

宮下洋一バルセロナ在住・日本人スペインジャーナリスト

今日、11月22日、各国の新聞のページをめくると、いつの間にか残すところはオサマ・ビン・ラディンのみと言った色合い付けがされている。たとえブッシュ大統領が戦争の本場はこれからだと言っているにもかかわらず。つまり、今回の米中枢同時テロのカギを握っているのは、紛れもなくサウジの億万長者であると言う。しかし、その犯行を彼一人の手でなされたとはとても考え難い。今でも彼だけが今回の重要責任者だとは、わたしは思っていない。一体誰が、どのようにして、全世界に名を広めたのだろうか。メディアの影響力について述べたいと思う。

先月まで働いていた、スペイン全国新聞国際部での話にないます。私たちは通信社から切りなく送られてくる情報をおおまかにすべて読み込む仕事をまずします。その後、重要だと思った内容(思ったと言うよりも、同じ内容の情報量が多いもの)を選出して、記事を書き始めます。つまり、ビン・ラディンだと言う確かではない趣旨のものが、九月十一日以後莫大に入ってくるため、ジャーナリストたちは証拠のないまま、彼を最重要犯だとして新聞の色をつけていきます。

中でも私が驚かされたのは、ある一人の記者がCNNテレビの中継を見ながら、「もう早く殺してしまえ」という感情的発言をしたときです。びっくりしました。今まで、ビン・ラディンについて無知だった記者が、送られてきた不確実な情報を元に、疑う目さえ持たずに、いつの間にか彼を犯人だと決め付けていたのです。そうなのでしょうか。客観性をいくら保つと言ってもやはり一人一人の考え方は紙面に現れるものなのです。それを国民が読み、自己決定をするわけです。

われわれ世界の人々は、この半世紀の間に、急激に科学の進歩を成し遂げました。皆、ありとあらゆる兵器を恐れています。今回の「国際テロに対するキャンペーン(私は戦争だとは思っていません。これもメディアの影響力ですが・・・)」は、感情のみで判断することは、ジャーナリズム的でなく、そして非常に危険を伴います。スペインは、NATOのメンバーです。各、陸海空軍兵もマスコミを頼っています。軽い発言は要注意しなければなりません。

現代60億人の世の中、人の考え方はそれぞれ異なるでしょう。イスラム世界には彼ら独自の思想や崇高があり、欧米の世界にもそれなりの道理にかなっているだろう理論が存在します。しかし、メディアが単にわれわれのみの考え方を正しいとして、その他の意見を取り入れようとしない態度は、果たしてジャーナリズムの倫理にかなっているのでしょうか。私は、そうあるべきでないと思います。

ビン・ラディンをかばっている訳ではありません。ただ、情報を広めることがわれわれの仕事である以上、単なるインプットの量だけで、それをあたかも決定的だと言う判断を下すべきではないでしょう。ここでジャーナリストの器量が必要になってきます。もし間違った記事を普及しているのならば、実はわれわれが世界を危機に直面させている最重要犯なのかもしれません。そして、われわれの書いている記事が歴史の第一資料として後世に残されていくことも忘れるべきではないと思います。

 


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