紛争解決と企業の役割
| 紛争解決と企業の役割 (2001年8月16日投稿) 渡辺美紀: 富士ゼロックス経営総合研究部部員 冷戦終焉後、世界における紛争の形態が多様化している。特に国家間の紛争に加え、国内の紛争(intra-state conflict)の増加が顕著だ。 紛争の多様化に伴い、国際社会による紛争への対応や解決策も変化を迫られている。国際機関や各国政府による仲裁・交渉などに加え、冷戦後はトラック2外交や紛争当事国の制度構築なども求められている。同時に、紛争解決の担い手にも新たな広がりが見られる。NGOの活躍はよく知られるところだが、企業も一定の役割を担っていることはあまり知られていない。 中東紛争の当事者であるイスラエルの例を見てみよう。軍需産業を中心に据えるイスラエルの財閥は、冷戦後、戦争を前提とした経営戦略から平和を前提としたものへと切り替えた。具体的には、非軍需製品の製造にシフトし、さらに、アラブ諸国への市場の拡大を狙ってイスラエル政府にアラブ諸国との関係改善を促した。こうした財閥の声はアラブとの対話に消極的だった多くの政治家を動かし、1993年のオスロ合意へと導く影の力となった。 日本周辺に目を転じると、韓国の企業も朝鮮半島の関係改善に貢献していることがわかる。韓国の企業は財閥を中心に、90年代初期から北朝鮮に投資を続け、最近では、金大中大統領が推進している太陽政策を経済面から後ろだてしている。2000年6月の歴史的な南北首脳会談では、複数の財閥のトップが金大中大統領に同行し、それぞれの企業が5億ドルから10億ドルの投資を北朝鮮にすると約束した。 もちろん、これらの企業は経済的な利益のために政府の和平交渉に協力しただけだ、とも言える。また、戦争を食い物にする企業がまだあることも事実だ。しかし、企業も紛争解決に貢献することができるということを理解して、それを新たな紛争解決のツールの一つとして利用すべきであろう。紛争を繰り返してきた相手の国に企業が投資し、貿易関係を構築・強化できれば、そこに経済的な相互依存関係が生れ、不戦への構造に一歩近づくことができるからだ。(ただし、依存関係が一方的だと逆に紛争を悪化しかねない。この点は別に議論する必要がある。) 日本企業は世界に広く展開している。進出先の国の紛争解決に向けて、第三者である日本企業にもできることはないだろうか。企業が海外に進出する際、政情の安定度合は重要な検討要素となる。これまではそれは所与であり企業にはどうすることもできないと考えられてきた。しかし、これからは企業がどのように働きかければ現地の政情安定に寄与することができるか、を考える時期にきているのではないだろうか。
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