エネルギー政策決定課程
| エネルギー政策決定過程と民主主義、市場経済 (2001年6月27日投稿) 田辺俊明 構想日本 政策スタッフ 1. エネルギー・ポートフォリオの決定方法 まず、エネルギー・ポートフォリオはどのように決定されるのであろうか。通常、政府の審議会などにおいては、GNP(国民総生産)などを従属変数として、エネルギー需給動向を過去のトレンドから予測、それを将来に向けて推計してエネルギー・ポートフォリオを割り出している。 次に、このように算出されたエネルギー・ポートフォリオを根拠として中央官僚がエネルギー政策を立案する。具体的には、補助金額の大きさや技術開発に対する投資額を決定する。例えば、現状において、原子力発電の割合がある計画年度において予測されている割合より低い場合は、中央官僚は、原子力立地補助金や原子力関連の技術開発への投資額を増額するであろう。 以上がエネルギー・ポートフォリオのエネルギー政策における位置付けを概観したものであるが、一見すると合理的であるように思えるこのようなメカニズムには、隠された前提条件があるのであり、ここではこのような前提条件とその問題点を明らかにして行きたい。 2.隠された前提条件 隠された前提条件とは、あるべきエネルギーのポートフォリオを予測し、それを現実化するために、補助金額や技術投資額などを変数として調整するのが審議会と中央官僚の役割であるという前提である。これは、現状からすると、当然の如く思われるのであるが、次の2つの選択肢と比較するならば、なぜ現状のような仕組みになっているかということに対する合理的な説明が必要となる。
第1に、エネルギーのポートフォリオを全て自由競争市場で決定するという方法が考えられる。エネルギーの需給を全て市場メカニズムで決定するという方法は、エネルギー安全保障や環境保全という要素を考慮すれば不適切であるとの批判もあるが、これに対して、完全な市場メカニズムはこれら全ての問題を解決すると主張する立場もある。 3.問題点 一般的に、官僚の計画による資源配分は、経済的には、市場の均衡点における最適な資源配分からの乖離を生じさせる=非効率を生み出すものとして批判の対象となるが、問題は市場における資源配分の歪みにとどまらない。より大きな問題は、官僚が技術的に算定された資源配分を現実化しようとすることにより、民主的な政策決定がないがしろにされてしまうことである。 つまり、エネルギー需給の統計的な「予測」は、現状を前提とし、それを将来に向けて延長することを意味するのであるから、将来のある時点において、一般の人々が、意図的にあるエネルギーのポートフォリオを選ぶという可能性を否定するのである。 つまり、エネルギー政策が「政策」である限りにおいて、それは単に統計的な予測こ根拠を置くべきものではなく、一般の人々が、エネルギー政策を選択する、選ぶという主体的な意思に根拠を置くべきものであることが民主主義の要請であるとするならば、予測による政策決定は、民主主義に反するものとして批判を免れないであろう。
原子力発電施設の立地や、放射性廃棄物施設の立地に対して、住民の反対がある地方自治体において、合意を形成する方法として、地域振興を名目とした補助金が国から注ぎ込まれたり、PA(Public Acceptance)活動を名目としてさまざまな活動が行なわているが、このような活動が、国が住民を説き伏せるという意味合いを持っているのは、以上のような理由によるものであると考えられる。
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