PRANJワークショップ記録3

    日米安保の課題・アメリカ単独主義、イラク、北朝鮮
  渡部恒雄氏 (戦略問題問題研究所 日本部 主任研究員)

 2002年10月21日 CSIS戦略国際問題研究所 (ワシントンDC)

座談会参加者:
平林栄次(経済広報センター)
加藤芳洋 (弁護士事務所)
林三千子(通商政策コンサルタント)
片桐範之(防衛情報センター)
辰己由紀(戦略国際問題研究所)
加納雄大(日本大使館)
中村美千代(フリー・ジャーナリスト)
中港拓
中村英正(日本大使館)
加瀬みき(AEI研究員 )
司会 村上博美 (ESI経済戦略研究所)

「北朝鮮の核抑止とアメリカの対朝イラク政策変化に伴う日本の政策変化」


片桐:北朝鮮に関しての質問がふたつありまして、ひとつは軍事面で、もうひとつは外交面です。10月16日に北朝鮮が核開発を進めているということを米国務省が発表したのですが、果たしてそれだけで、日本の北朝鮮の核に対する脅威のレベルが上がったといえるのかどうかが私にはわかりません。なぜなら、北朝鮮が仮に持っていて、それが兵器化の状態であったとしても、アメリカの核抑止があるわけですし、それに北朝鮮が核を持っていて、その装備の形であったとしても、それを核弾頭に入れて、それをノドン1号を発射して、それが日本に当たる可能性についても私は信じられないのです。確かに核を持っていて、それをスーツケース爆弾などの形で、例えば、新潟を攻撃するなどできるんですけれども、それは金正日のMadman theoryを正当化されていれば、良いのですけれども、果たして、そうは言えないと思います。それに通常型紛争の場合ですけれども、北朝鮮からの韓国もしくは日本に対する通常兵器による攻撃があったとしても、その件で、渡部氏は、アメリカは2正面作戦を、昨年の(QDR,Quadrennial Defense Review)で落としたとおっしゃられていました。
 
けれども実際に、朝鮮半島や沖縄、日本本土にある米軍の配備状況を見れば、韓国には3万7千人の兵力が、日本には4万5千人の兵力があります。しかし、私はそういうことを考慮すれば、通常型の抑止力も働いていると思います。そういった観点から、私は北朝鮮の脅威は日本に対してほとんどないと思います。それが第一の点です。第二の外交面なのですけれども、この国務省の発表の後に、ブッシュ大統領が外交的解決をすると言っていたのですが、いくつかシナリオを用意して、この外交が成功した場合、日本に対して、それはどのような影響がありますか。もし、北朝鮮で外交が成功した場合、例えば、IAEAの査察を入れたとして、北朝鮮が核開発をやめると約束した形だったら、例えばそれは、アメリカのハト派にとっては、イラクにも攻撃する、Preemption=先制攻撃する必要はない、という論理も成り立つわけです。仮にそれで、逆に北朝鮮に対する外交が失敗した場合、当然、アメリカのタカ派が喜ぶわけで、その場合の日本の北朝鮮もしくはイラクに対する政策にどのように影響を与えるのかということについてお伺いしたいと思います。

渡部:まず、私が先に言っていたのは、脅威になっているとは思いますが、抑止が働いていないとは思っていないということです。抑止は働いていると思います。北朝鮮が核を持っていたとしても、アメリカの核の存在が抑止力となっています。要するに、抑止というのはどういうことかと言えば、自分が使ったら相手も使うという状況を恐れて、攻撃をためらうことですから、アメリカが先制的に、北朝鮮を攻撃することも、現実には抑止されているわけです。だから、アメリカがPreemptiveな攻撃ができない理由の一つとして、北朝鮮の通常兵器による韓国への攻撃の可能性をあげたわけです。これで双方向に抑止がきいているという説明が可能かと思います。ただ、それと同時に日本の一般国民の脅威の認識度が、今回北朝鮮が核を開発しているということが見えたことで、ものすごく上がるとは私も思えません。なぜなら、これまでもある程度、インテリジェンス筋はみんな、おそらく持っていかもしれないと思って対応してきたわけです。

ただ、それが、もう少し、国民レベルで見えるようになったということです。これは純粋な戦略関係というよりは外交の話です。これを何故あえてお話ししたのかというと、普通の人はあまり深く考えていないのではないかと思うからです。日本はテポドン・ミサイルの時は、すごく焦ったけれども、その前から実はノドン・ミサイルの存在がありました。テポドン1号2号というのは、射程距離が日本を超えていて、どちらかというと、テポドンの存在で脅威を感じるのはアメリカです。今回、小泉首相の訪朝の際に、北朝鮮が「これ以上ミサイルの実験をしません、モラトリアムします。」と言ったのは、おそらく、テポドン2号が対象となると思いますけれども、あれで喜ぶのはアメリカであって、日本は関係ないのです。日本が射程のミサイルは、テポドンではなくノドンなので、それはもうすでに配備されているのですから。ところが、ノドンが装備された頃は、日本人は騒がなかった。テポドンで騒いでいる。これは本当にずれているのですよ。同じことが今回もあって、核開発の可能性が見えてくると、やはりノドンを持っているのだからそれなりに緊張感を持たなくてはいけないのではないかとみんなが考えるでしょう。さらに言ってしまえば、中国はミサイルも日本が射程のものを持っていて、核も持っていて、もっと能力があるので、これは気をつけなくてはいけないなと考える人が増えるかもしれない。ただ、中国が北朝鮮と違うのは、中国側はある程度意図が見える点です。意図が見えるというのは、どういうことかというと、やはり日本との通商関係において、相互依存関係になっていて、失うことも多いから、そんなに日本と敵対ばかりはしていられないというところに安心感があるわけです。そういう意味では、北朝鮮もそういう形に持っていくように誘導するということが、本当はゴールなのでしょう。言うのは簡単ですが、なかなか難しいと思います。

それからブッシュの外交的解決がうまく行かないとき、これはわかりませんね。それはどのくらいかかるかわかりませんが、そのタイミングが例えば、北朝鮮も難航していて、イラクの話が難航していて、両方同時に武力行使という話には、アメリカもしたくないでしょう。ブッシュ政権の戦略として、ならず者国家やテロリストの大量破壊兵器開発と拡散を防ぐために先制攻撃を、アメリカ一国だけの意思で行うという理屈を、ひとつの大きな戦略でつけていますけれど、優先順位はイラクの方が高いのです。それは何故かと言うと、政治的なモチベーション、イスラエルの問題も入ってきますし、中東の石油の問題も入ってくるし、中東の安定への切実度の高さということもあるでしょう。いろいろありますが、イラクの方が政治的に優先順位が高いのです。だからある意味では、私がブッシュ政権のタカ派であれば、国益にとってどちらが大切なのか、北朝鮮よりはイラクを攻撃する方が大切だと言ってしまうでしょうね。ただそう言って、国益のためになんでもかんでもやってしまったら、それこそ、アメリカがかき回すスタンダードの幅が大きすぎて、批判も大きくなりますから、そこはバランスよく見ざるを得なくなってくるでしょう。また2正面で硬直すると面倒なので、その中でアメリカ側というのは一正面で動くかもしれないし、動く可能性は十分高いと思います。それから、IAEAの査察がもし北朝鮮に入って、そこでうまく外交的な手段が成功したということになればどうなるのでしょう。

最近の北朝鮮の動きは早いので何とも言えませんけれど、イラク攻撃は、おそらく考えている時期というのは、今年の終わりから、来年の頭くらいですよね。それまでに北朝鮮内にIAEAの査察が入って、外交手段が効果的にいくような、タイミングはあまり考えられないのです。そこは、少し時間のずれがあるでしょうし、どうなるかはわかりません。本当に難しいと思います。ブッシュ政権の中で、ネオコンと言われている人達、特に、国防総省のトップ周辺にいる、ウォルフォビッツとかリチャード・パールとか、あのラインというのは、なかなか理屈は鋭い部分があって、自分たちの政治的意図やあるいは彼らが考えているようなアメリカの国益に関するものへの、理論的な武装というのは見事です。それらの勢力が北朝鮮に対してどう出るかというのは、正直言って分かりません。見ものです。今のところは、ブッシュ大統領の最初のコメントというのは、どちらかというと、
北朝鮮に対してもエンゲージメントするという状況で走りだしましたから、割とソフト路線でいくかな、という気もしないでもないけれど、それだって、国防総省ではなくてホワイトハウスが言っていることであって、時期が来たならば、実はものすごく強硬姿勢をとるかもしれないし、これはまだ今の時点では全く分かりませんね。
 

                     
辰己:渡部氏の話に付け加えたいことがあるのですけれども、北朝鮮とイラクを考えた場合に、やはりアメリカとしての優先順位はイラクの方が高くなるだろうと渡部氏がおっしゃったところは、私も同意するところです。しかし、いわゆる政治的なところというのはあるのですが、軍事的なリスクを考えた場合に、やはりイラクの攻撃ということを考えますと、ふつうの湾岸戦争と全く同じパターンとは言わないまでも、軍事戦略、軍事的な、戦術的なところを考えた場合に、まず、空からの攻撃であるというのがありまして、そこから地上兵力に持っていくということで、初期の段階で出る米軍の犠牲者数、死者数というのは、格段にイラクの方が少ないはずなのです。朝鮮半島には、先ほど、片桐さんがおっしゃったように、3万7千人の米軍の兵力というのがいる、それは抑止になっていることはいるのですけれども、この人達はDMZ(非武装地帯)のあたり一帯にいるということで、初期に出る米軍の犠牲者数というのは、北朝鮮とイラクのシナリオ、両方を考えた場合に、単純計算しても、北朝鮮の方がはるかに大きいのです。

そこで、それだけのリスクを犯して北朝鮮みたいな「ちんけ」な国に行くかと、そういう単純な計算の問題があるわけです。というのは、アメリカの国民がアフガニスタンの作戦で米軍の犠牲者が出たとき、これは非常に数としては微々たるものではあったのですけれども、あれを見るかぎりでは、きちんとした名目があれば、アメリカの国民というのは、戦闘による犠牲者というものを、きちんと受け入れることができる。ただ、アフガニスタンというのは、ものすごく特殊なケースである。あまりにも、そのアルカイダとアフガニスタン、タリバンとの関係というのは密接であったから、これはもう、多少の犠牲者が出ても、やむを得ないと思っていた面がアメリカの国民の中にもある。何と言っても、やはり9月11日の大惨事の後ですから、心の準備の度合いが、やはり北朝鮮に米軍を投入する場合だと、準備度というのが、かなり違うのではないか。そういうことを考えても、やはり北朝鮮に対して、先制という形であれ、どういう形であれ、やはり武力的に対峙をするというというオプションというのは、この政権はおそらく最初から考えていないと思います。おそらく政治的に持たないでしょうから。これが付け加えたい点です。

「国のトップのあり方について」


巳:それからもうひとつ、質問があるのですが、イラクと北朝鮮から話が変わるのですけれども、日本とアメリカのリーダー、総理と大統領ということを見た場合に、良く言えば、一本気な人達が今日本にもアメリカにもいると。悪く言えば、一度に一つか二つくらいのことにしか集中できない人達が、アメリカでは大統領を、日本では総理をしている。外交政策ということを考えた場合に、ブッシュ政権の関心というのはなにかというと、国家戦略報告よりも先に本土防衛に関する戦略報告を出しています。それが、ここのホワイトハウスのおそらく根本的な意図なのだろうと思います。何をおいても、まずホームランドセキュリティであると意志が断固としてある。そういう大統領がアメリカにいる。

かたや日本を見ると、拉致問題と決めたら、それに向かって突進してしまうような一本気な総理がいる。というある意味で言えば、全体的な絵が見えていないというのは、これアメリカも日本も同じ状況があると思うのですね。ただアメリカの方は見えていなくても許される、あ、しまった、間違ったと思っても、取り返しがつく面があり、国力が圧倒的に強いがゆえに多少なりともマージンがある。日本の場合はそのマージンが非常に少ない状況だと思うのですけれども、そういう状況でこれから日本は、何がなくともホームランドセキュリティであると考えているアメリカに同盟国として日本がその、それもそうなのだけれども・・・という、今、ちょうど安保理の中で行われているようなフランスとアメリカがやっているような駆け引きですよね。そこまでを求めないにしても、日本は日本なりにアメリカに牽制をかける、ブレーキをかける、あるいは違うオプションを提示していく、ということをするためには、何が必要なのでしょうか。

渡部:そうですね、難しいですけれども、日本は今までそういう準備をしてこなかったから、一朝一夕にできないですよね。みんなそんなこと、あまり考えていないですよね。だからこそ、裏返しとしての国内では反米感情みたいなのが強まるでしょう。だから本当は逆で、アメリカときちんと付き合うためには、きっちりとどうやったらいいかということを常に考えている人間がそれを政策提言して議論の枠を拡げて、また、そういう人間が首相官邸のトップにいかなくてはいけないのですよね。まわり道かもしれませんが、当分はなかなか苦しいけれども、最低限の優先順位を決めて、日米関係、日米同盟を壊さないようにしつつ、自国の利益を守っていきながら、日本の取れる選択肢と議論のすそ野を広げていく、そのためにも、政策コミュニティの充実を・・・というのが、今日の大きな話です。それは即効性のあるの答えでは、ないのですけれど。後は、もう一つは、政権交代があって、違うオプションが今から分かっている国というのは、強いですよね。

アメリカもそうだけど、韓国もそうですよね。私、さっき、韓国がハンナラ党になったらこうなると見えるわけですよ。日本はやはりまだ、そういうところになっていないので、そうなってくると、外交の「技」としても弱いですよね。アメリカだって、これだけブッシュが一国主義的でやっているわりには、一国主義批判を民主党がやっているんですから。それだと、ブッシュがこんなにきつい戦略を立てたって、「あれはね、ブッシュの政権であって、俺達は違うぞ」と言えるわけですよ。日本だって、アメリカの一国主義批判を言うべきときに、もっと言っても良いのだけれど。でも、そんなに代替となる政策がきれいにできていないので難しいでしょう。この辺は、日本で次に政権を狙う人にとっては、大チャンスなのです。

ただ、そういう人達、次に政権をとる人達が、きっちりと情報をつかんで代替となるような体系的な政策を作るような組織ができていない。今日のテーマはそれを作らなくては、という話ですよね。それからもうひとつ、日米で一本気な人達二人、まさにそうなのですけれども、あるアメリカの有名な人の言葉に、政治家とか政治リーダーというのは、ガーデナー(庭師)だ、メカニック(整備士)ではないのだ。メカニックというのは、常にどこか、トラブルだけを探して、一点、直して、一点直して・・・というふうにやっていくと直って機能する。ガーデナーは違う。ぱっと見て、庭の中でこのバランスを取りながら、全部見ながらやっていく。それを求めなくてはいけないという話で、これは私自身も、常に庭を見るように、心がけているのですけれども、なかなか難しいですよね。

それから一本気だからこそ、良い部分というものもあって、例えば一本気なブッシュ大統領が支持されているのは、アメリカが一本にまとまらなくてはいけないという攻撃を受けた時期だからこそでしょう。日本だって、一本気の総理大臣が選ばれている理由というのは、今まであまりにも硬直的で国を指導するリーダーが見えなかったから、一本気の人の方が今までの、ごちゃごちゃからまっている「しがらみ」なんかをとっぱらってやってくれる、という意図のもとに選ばれているわけです。そういう一本気の使い道というものもあると思うのです。ただ、一本気同士で、このまま行ってしまうとこわいので、一本気の代替選択肢が大事です。アメリカも今のところ、一本気に対抗するような代替選択は弱いですよね。本当に強いリーダーが出てこないといけないのかなあという気がします。アメリカはまだしばらくは無理でしょう。あんまりブッシュ路線に対して、きついことをいうとつぶされてしまう。今は、まとまらなくてはいけないという空気なので。日本は、一本気な人の後にまた、一本気な人が控えていて(笑)。それはそれで困りますね。

民主主義のつらいところなのですけれども、リーダーシップを発揮しようと思うと、一般的な人気が必要で、そのためにどうしても俗受けする要素が必要になってくるから、政策議論も一本気になりがちです。だから本当は民主主義のリーダーと言うのはずるくなくてはいけない。一般の単純な図式で見ている人には一本気なメッセージを送りながらも、実際やることになると、それなりにバランスをとったことをやる。それはある意味では、ダブルスタンダードと言って、批判されたりする可能性はあるわけですけれども、ブッシュ大統領にしても、これから、それをできるかというのが、実は彼の勝負どころかもしれません。というのも、まさに今日話した北朝鮮とイラクで異なる状況にどう対応するか、それらへの
対応が確実にひとつの戦略だけで割り切れるものではないだけに、柔軟に対応して、矛盾しているけどでもやっぱり必要なんだよな、と国民に思ってもらえるかどうか。ブッシュ政権としてもこれからが勝負です。
 

平林:北朝鮮の核開発について発表したのは、10月16日で、北朝鮮から帰ってきてから数日間空いている。これイラクの問題と比べると、随分と大きな違いのように思える。イラクの方がプライオリティが高いということは当然ですが、「政府当局者による核開発の公言」という事実の重要性からすれば、当然、すみやかに発表してもおかしくない。この点、ブッシュ政権の発表方法の一貫性について、今日もワシントンポストの記者が怒ったように質問していましたけれども、そういう非難がマスコミからも出てくるであろうし、議会でも追及されるオブザベーションをお伺いしたいのですが。

渡部:これは、完全に仮説の範囲に入ってしまうのですが、ひとつは国務省系はこの事態を使用してバランスをとろうとしているのかなあということがあります。つまり国務省のエンゲージメントが大事だと思って現実的な外交をする人達が、一本気な人達に対する牽制として使えると思ったのかどうか。ただ、本当に使えるかどうかは怪しいから、これは仮説として弱いのですけれども。あとはもう一つは、まあ、どの道、ばれるのではないか、という部分がありますよね。まず、もうこの話、北朝鮮の核保有の話というのは、アメリカ側も、日本にも韓国にも言っている話ですから。米朝間でその機密を協議していて、この話を黙っておくと、日韓との関係が悪くなりますから、これは避けなくていけない。そんなにその、握りつぶせるような話ではないということです。

片桐:付け加えたいことがあるのですが、多分、あともう二つくらい理由があると思うのですけれども、帰国したのが10月5日で、発表したのが16日と、12日間あり、その間に議会で可決されたのがイラクの決議案で、その様子をみるため、というのがひとつ。あと北朝鮮に、ガス遠心分離機、アルミニウムなどの高濃度のウラン濃縮に必要な道具をパキスタンが北朝鮮に輸出しているというような話があります。10月10日にパキスタンで選挙があったのですけれども、特にパキスタンの北西の方にあるあの辺のアフガニスタンに接した国のイスラム教徒が、特に特に力をつけて、票をたくさん得て、そのプレッシャーもあると聞いたのですけれども。

平林:江沢民の延命策というのはないですかね。要するに、「北朝鮮を頼みますよ」ということで、アメリカは江沢民に借りを作ることになりますよね。江沢民は親米派だし、新政権後も残りたいと思っている。それでは残った方がアメリカにもとっても得であるという材料を与えて、訪米する予定の江沢民に良い格好をさせようという配慮です。

渡部:今日の午前中のCSISのブリーファーの口振りをみると、そういうこともあるのかもしれませんけど。
 
「日本の政策思考過程」

加納:質問とコメントになるのですけれども、冒頭おっしゃられた政策コミュニティの不備とか、いろんな政策を競争していく、ということが、ぜひ出てきて欲しいなという気がするのです。その関連で少し思うのは、日本の場合、どうしても考えたくないことは考えないという傾向がある点です。いろんなオプションを議論しているように見えても、実際、本当に考えたくないことは、実は無意識のうちに除外しているというような側面があると思うのですね。今の議論を伺っていても、北朝鮮がどうなるかとか、アメリカの政府とか世論がどうなるかというのは、いろんな評論家の人が出てきて、いろんな議論ができますけれども、日本は別に北朝鮮でもないし、アメリカでもないので、最後の所ははっきり言ってわからない。北朝鮮やアメリカの意図を忖度するのに終止するよりも、むしろ、先程、渡部氏もおっしゃられたと思うのですけれども、そういう中で最悪のケースが起きた場合、それについて、どういうオプションがあるかということを、あらゆる状況にも提示できるかどうかというのが重要だと思うのですね。考えられる限り、北朝鮮での最悪の事態と言えば、まさにそれは、外交的手段が失敗して、北朝鮮、朝鮮半島で軍事衝突が起きて、アメリカが軍事行動を起こしたときに、じゃあ日本はどうするのかということでしょう。それは対米支援という問題もあるわけですけれども、日本自身の個別的な自衛権の行使ということも考えなければいけないという話だと思うのですが、その一番考えたくないところで、どれくらい、つっこんだ政策オプションというものが議論できるのかどうか、可能であれば、渡部氏の考えをお伺いしたいと思うのですけれども。

それからさっきの日米韓の3人4脚の話に例えて言えば、アメリカは、これは個人的な意見なのですが、如何なるケースに直面しても腹が据わっているようなところがあると。それは外交的な可能性を探求しつつも、外交的に失敗した場合でも、それに応じた軍事的対応をするという腹の据わったところが多分あるような気がするのです。韓国もいざとなれば、米韓連合軍で米軍の司令官の元で米国とともに戦う、集団的自衛権を行使するという形になっています。韓国の場合は意志があるというよりも、選択の余地がないということかも知れませんが、そのような3人4脚に米韓がなった場合、日本はどうするかということです。韓国よりも選択の余地があるかもしれないと思って、仮に米韓とは異なる対応をして日米韓の足並みを乱すことになった場合、場合によっては、日米同盟とか日韓関係において大きなものを失うところはありうる気はするのです。

こういう問題を政府の立場にある人間が提起すると、そういう最悪の状態が起きないように外交的な努力をするのが外務省の仕事でしょうという話になって、そういう事態を何となく意識の中から遮断するような感じになると思うのですね。そして、自分たちの考えうる思考の範囲の中で、例えば、北朝鮮は核開発はやっていても搭載する技術はまだないのではないかとか、アメリカにもいろいろな意見があってこういう見方もあるのではないかとか、はっきり言えば、希望的観測に基づくとりとめもない議論だけが続くということになる。本当に考えたくないことを考えるというところが、まさに政府と距離を置いた立場の政策コミュニティで議論していただきたいところだと思うのですが、そのあたり、どのようにお考えでしょうか。

渡部:考えたくないことは考えない理由ですが、ある程度、責任のない人、政治的な攻撃にさらされない外野の人が考える構造になっていないからではないでしょうか。そうじゃないと難しい。また、やはり政策間の競争があって、「この政策議論、大事な点が足りないじゃないか」という議論があればいやなことでも、考えざるを得ない。ワシントンのポリシーコミュニティーの中では、常に真剣な政策論議が行われているわけですが、もしある専門家が、考えたくないことを考えないで、不完全な自分の政策案を発表すれば、その欠陥部分を他人から批判されて、自分の評判を落とすことになります。そこで評価が下がれば、政権入りしても、民間にいても、出世できない。日本では、考えたくないことを考えて、議題に持ち出したほうが、むしろ足を引っ張られて出世し難いケースが多いのではないでしょうか?

日本のいままでの問題というのは、政治家とか政府の人間というのは、考えたくないことを考えてそれを言っても、攻撃材料にされるから、考えているけれども言いたくない、というところがありますよね。そこが、政策当局者ではなく外野が考える構造が必要な理由です。もちろん、考えることはできるけれども、表立ってちゃんと議論はし難いはずです。やはり当事者から一歩距離を置いている人がやらないとダメなのですよね。という部分で、そこが今、やはり弱いですよね、日本は。それから朝鮮半島に関しては、しかしながら、考えたくない最悪の状況を準備してやってきましたよね。日米安保の今までの一連のガイドライン見直しからの法整備というのは、まさにそのためにやってきているわけですよ。それで、まだ終わってないわけですね。宿題がいっぱいあるのですけれども、まずはやはり有事法制でしょうね。実際問題、北朝鮮が韓国を通常兵器で攻撃した場合に、日本の自衛隊が朝鮮半島で戦うこと、というのは、準備もしてないし、訓練もしていない上に、実際は求められていない。十分、在韓米軍と韓国軍で対処できると。一緒に訓練もしていない。

それから日本の軍隊が朝鮮半島に行くことには、韓国民の感情がまだ許さない。したがって、実際は、そんなことは誰も考えていない。結局のところ、日本にはスムーズな後方支援をして欲しいわけです。ところが、そのスムーズな後方支援ですら、それに対する政治的な反対が強かったのが、これまでの日本であったわけですね。それをできるだけ、日本の有事の際の協力の予測可能性を高いものにしてきたのが、これまでの10年20年くらいの日米安保のマネジメントの闘いであったわけです。ガイドライン関連法が通って、相当スムーズになってきたとは思うのですが、それと同時にまだまだやるべきことは残っております。例えば、良く言われるのは、朝鮮半島有事の際に各地方自治体の首長が、米軍のオペレーションに許可を与えないとか。こういう話ってありますよね。だから、その辺をスムーズにするには有事法制、という部分が出てくるわけですよ。

ところが有事法制も、今国会では成立しませんでしたけれども、まあ欠陥が多かったのはわかりますけれども、特に、何故、冷戦時代のことをやっているのだ、という批判がいっぱいありました。もちろん、いくつかの点はそうかもしれない。北朝鮮が日本本土を直接、通常兵器(Conventional Weapon)で襲ってくる可能性はないかもれない。ロシアがおそってくる可能性もないかもしれない。その意味では、そうなのだけれども、ただし、オペレーション上は、特に対米の後方支援ということに関しては、もう少し、法整備しておかないといけない部分も沢山残っています。後は、やはり感情の問題があって、やはり日本人って妙に、自分に自信とプライドを持っているから、変なところで。アメリカに対する後方支援の準備というと、アメリカのお尻をなめるようなことは、したくないという人がいます。したくないというのなら、日本がアメリカと対等に戦うのか、と聞くと、いやあ、それもいやだというのです。それでは、日本は自分達の安全を保障するためになにをするんだ、という話です。そこは、このような議論を積み重ねながら、感情的な反発とは別のところで、日本の損得で考えられる合意を作っておかないと、物事は進まないと思います。まあ、日本は今まで着々とは準備をやってきていますよね。まともなレベルにいくまでもう少しだと思います。

 

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