■ 『政策海外ネットワーク"PRANJ"レポート』  第17回目
   「政府の直接関与から間接関与へ――近年のアメリカの住宅政策

   青山公三  :IPA ニューヨーク大学・行政研究所上席研究員

<はじめに>

 最近のアメリカの住宅政策は、依然として低中所得者層に対する住宅政策が重要な課題であるが、一言で言えば、「政府自らの直接投資を抑制し、民間パワーの効果的な活用によって進められている」といえる。ニューヨークでは、豪華な高級住宅を建設する不動産王として知られるトランプでさえ、様々なインセンティブを活用し、リバーサイドサウスと呼ばれる大規模な住宅開発において、賃貸住宅開発戸数のうち20%を低中所得者層向け住宅として建設しつつある。

また劣悪な居住環境として知られるハーレムでは、民間のノンプロフィット団体が市の持つ土地や建物をわずかな額で譲り受け、地元銀行や民間投資家からの資金をもとに、良質な新たな住宅の開発、既存住宅の修復を行っている。ボストンでは、市有地をコミュニティ・ディベロップメント・コーポレーション(CDC)に開発させ、完成した住宅のうち3分の1を市場価格で売り出すことにより、3分の1の住宅を低所得者向けに安価で提供でき、しかも残りの3分の1は中所得者層に提供されるため、所得階層の偏らない住宅開発が行われている。

一方で、過去の住宅政策の重要な柱の一つであった公営住宅は、各地ですでに新規開発はストップし、リノベーションプログラムや、管理運営の民間委託が検討・推進されている。

 アメリカの住宅政策は、1930年代から70年代にかけて、経済危機や貧困に対処するために、連邦政府が公営住宅やスラムクリアランスなどを中心に、直接的に関与する住宅政策が形成されてきた。しかし、70年代のニクソン政権以降、連邦政府は、徐々に諸施策を通じて直接関与を避け、市場原理に基づいた民間のパワーやノンプロフィット団体(NPO)を活用する間接関与政策へと移行しつつある。もちろん間接関与になったからといって、連邦政府の住宅政策に対する姿勢が後退したわけではなく、依然として重要施策であることには変わりないが、時代の変化と、経済の変化に対応して柔軟に政府の役割を変化させてきている。

本稿では、そうしたアメリカにおける最近の住宅政策を具体的な開発事例を通して紹介し、その成果などについて論じてみたい。

<アメリカの住宅政策の歴史的背景>

 アメリカにおける現在の住宅政策の基本的な枠組みは、1929年の世界大恐慌以後のニューディール政策時に形成された。まず、1934年に連邦住宅法(Housing Act of 1934)が制定され、これに基づき、建設雇用を創出することや、建設事業促進の目的で公共事業庁(Public Works AdministrationPWA)が設立された。

また連邦政府が住宅建設資金の低利融資に乗り出すために連邦住宅庁(Federal Housing AdministrationFHA)が設立された。当時は、大恐慌以後の経済危機を克服するための公共事業投資が求められていたことと、恐慌で発生した大量の貧困層の救済が急務であった。

 1936年には、新たな連邦住宅法(Housing Act of 1937)が制定され、公営住宅の建設を推進する米国住宅公団(US Housing Authority:USHA)が設立された。USHAは全米の自治体が公営住宅の建設を行うにあたり補助を行う機関で、これに伴い全米の各都市のHousing Authorityが設立された。また1949年に制定された連邦住宅法においては、荒廃地域における住宅整備の3種類のアプローチ(除去:Clearance、再生:Rehabilitation、保全:Conservation)の原則に基づく政府支出の方針が打ち出された。この原則は政府の間接的な関与の時代となった現在でも受け継がれている。

 この頃に制度化された公営住宅制度をはじめ、住宅補助、融資、税制度などの様々な住宅政策が、戦後から現在に至るまで、幾多の改正、修正を経て、現在の基本的な枠組みを形成している。

 その後1950年代から60年代にかけて、全米の各都市で郊外化現象が進行し、とくに都心の荒廃化(インナーシティ問題)が大きな問題となっていった。1965年には、住宅都市開発法の成立により、住宅都市開発省(HUD)が設置され、都心の大規模な再開発が推進された。また住宅については、連邦政府による直接的な家賃補助や低中所得階層向け住宅建設者に対する低利ローンの確保、公営住宅の拡大など、連邦政府が貧困層に対して直接的に支援をおこなう政策が次々に打ち出されていった。

しかし、1973年に発足した共和党のニクソン政権は、家賃補助など、半ば垂れ流し的に行われていた連邦政府の住宅政策をそのまま続けると、政府自体の崩壊につながりかねないとして、それまでの住宅政策の根本的な見直しを行った。この頃から連邦政府の住宅政策が、徐々に直接的な補助政策から、民間ディベロッパーや投資家、NPOなどを巻き込み、低中所得者向けの住宅ですら、市場メカニズムを原則とする住宅政策へと転換していくのである。

<最近のニューヨークにおける大規模な新規住宅開発>

 最近のニューヨークにはいくつかの大規模な新規の住宅開発があり、それらの開発が現在のアメリカにおける住宅政策の象徴的な要素を持っている。現在ニューヨークには、先に挙げた不動産王トランプがおこなっているリバーサイドサウス開発(5,700戸)、バッテリーパークシティ北部地区の住宅開発(5,000戸)などの開発が進められている。

◇ リバーサイドサウス開発

 リバーサイドサウス開発は、全く民間開発であるが、総戸数5,700戸のうち、賃貸住宅の20%以上に相当する約700戸の住宅が、低中所得者向けの賃貸住宅(以下アフォーダブル住宅 という)として供給される予定である。ディベロッパーであるトランプ社は、その建設を行う代わりに、残りの住宅開発について12年間の固定資産税の減免を受けることが可能になる。

 トランプ社が建設するアフォーダブル住宅については、連邦の住宅政策に基づくいくつかの優遇措置がある。この住宅は、連邦の一定の基準をクリアした住宅の質を確保する必要があることと、住宅の水準に見合った家賃の上限が決められている(通常、居住者の基準所得額?地域における所得中位値の50%の額?の30%)。トランプ社はこの賃貸住宅を一定年限維持、提供の義務がある(新築の場合は通常30年間)。もちろん、トランプ社はこうした条件を満たした住宅を最低限決められた割合(この場合は20%)でアフォーダブル住宅として提供しなければならないが、残りの住宅は同じ住宅でも市場価格で一般に提供可能である。こうした条件を満たすことによって、トランプ社はアフォーダブル住宅に関し、以下の優遇措置を受けることが可能となる。

1)入居者の世帯所得の30%をこえる家賃分については連邦が補助(家賃は基準所得額の30%以内と上限が決められているが、実際の入居者は、基準所得額よりも低い所得の世帯が当然ある。家賃はその世帯の所得の30%よりも通常高くなっていると考えられるので、その差額分を住宅供給者に補助するものである。)

2)アフォーダブル住宅の建設に連邦の補助を受けていない場合、建設費の70%を10年間にわたって税控除を受けられる。(一種の減価償却費の控除と同じ)

3)12年間にわたる固定資産税の減免(市の優遇措置で、他の開発住宅にも適用)このような優遇措置を提供することによって純粋に民間資本で行われる住宅開発の中に、アフォーダブル住宅を組みこみ、しかも管理運営を民間に任せてしまうというのは大変注目できる。このような開発ができるようになったのは、基本的にはニクソン政権の「住宅およびコミュニティ開発法」(1974)以後のことである。

(アフォーダブル住宅というのは、低中所得者層の人々が、所得に見合った家賃で入居できる住宅のこと。)

◇ バッテリーパークシティ開発

 バッテリーパークシティ開発は約37haの土地や基盤の開発を、バッテリパークシティ・オーソリティ(BPCA)というニューヨーク州の特別法人が行っている住宅を含む複合開発である。公的な機関が基盤整備をし、その上にできた土地を民間ディベロッパーにリースして開発を進めているものである。

 

 とくにここでは、北部地区における住宅開発において、幅広い所得層の住民をこのコミュニティに居住させることを目的に、連邦の政策に基づくニューヨーク州の「80?20プログラム」を実施している。このプログラムは、ディベロッパーによる開発戸数の20%を低中所得者層に提供することによって、ディベロッパーは市による固定資産税の減免と、リバーサイドサウスと同様の家賃補助、免税債権による低金利の資金調達を受けられるプログラムである。リバーサイドサウスと異なるのは、免税債券の発行である。開発主体であるBPCAは、この開発を行うに際し、アフォーダブル住宅の整備を条件に、免税債券を発行し、一般の投資家から広く資金を募り、資金調達を行っている。

 このプログラムは2つの点で評価することができる。一つは、低中所得階層の人々を分散的にコミュニティの中に織り込んでいくことができることと、もう一つは一般の民間投資家の資金を低中所得者向けの住宅に使うことができる点である。役所側がインセンティブを与えたことにより、これまで、市場メカニズムに組み込みにくかった低中所得者層向けの住宅開発を、民間資金で行えるようになったことは、大きな意義があるといえよう。

<ボストンにおける地元コミュニティの開発会社によるラングハムコートプロジェクト>

 ボストンの都心部の南西方向に隣接する地区をサウスエンド地区と呼ぶが、その中にラングハムコートという市有地を利用して、市のボストン再開発公団(Boston Redevelopment Authority: BRA)とコミュニティ団体が連携して開発した84戸のコーポラティブ住宅がある。

 ラングハムコートの総開発費は1,700万ドルで、この資金の内訳は、約60%が州の住宅金融庁を通じた低利融資、16%が州や市の補助金である。残りの24%が自己資金であるが、自己資金と言っても、大半は投資家たちや開発後の管理運営を行う会社による負担となっている。住宅はコーポラティブ形式であるが、所有者は、入居者と自己資金提供という形で投資をした投資家(プルーデンシャル保険、フリート銀行)、開発後の管理運営を行う会社の3者で構成されるLangham Court Limited PartnershipLCLP)が所有者となっている。コーポラティブ形式のメリットの一つは、賃貸住宅と違って、入居者は組合の一員として住宅を所有できること、またそれによる持ち家に関わる様々な連邦の税制優遇も受けられることである。

 もう一つラングハムコートで注目されるのは、プロジェクト内での階層間補助(Cross Subsidy)である。これは所得階層を混合するために考え出された手法だが、このプロジェクトは、様々な補助や低利融資が入っているのでプロジェクト全体としては相対的に市場価格より安い住宅が提供できる。3分の1、28戸の住宅は市場価格で売り出され、普通の所得階層の人が購入する。次の3分の1はプロジェクト全体の平均価格で中所得者向けに売り出される。そして残りの3分の1は低所得者向けに販売される。最初の3分の1が市場価格で販売されたことにより、平均価格より安価で低所得者向けに提供できる。市場価格で買ったとしても固定資産税の減免等の優遇措置が通常つくので、買った人には有利となる。

 このような形でラングハムコートでは、多様な所得階層の入居者を1つのプロジェクトの中に入れることが可能となったのである。単一構造ではない、多様な構造を持ったコミュニティの構築を行ったところが注目される。

<ニューヨーク・ハーレムのNPOによる住宅供給>

 ニューヨークのハーレムは、かつての劣悪な居住環境から脱却を図るべく、今、ダイナミックに変貌を遂げている。そこで大きな役割を果たしているのが多くのNPOである。中でも財界が中心となって設立したニューヨークシティ・ハウジング・パートナーシップ(NYCHP)は、ハーレムをはじめ、ニューヨーク市内各地で、新規住宅の建設、既存住宅の修復などを積極的に進めている。

 NYCHPは、例えばハーレムのシャバズガーデンプロジェクトで、市から更地を1戸あたり500ドルで譲り受け、応募してきた地域の中小ディベロッパーの中から選ばれたディベロッパーに低中所得者向け住宅を開発させている。ディベロッパーは州や連邦政府、市の補助、銀行の低利建設融資などにより、3戸を1ユニットとする住宅を41ユニット(123戸)建設した。1ユニットの分譲価格は約27万ドルであった。3戸のうちの1戸は所有者で、あとの2戸は低中所得者や一般の居住者達に提供される。所有者は2戸の賃貸料でモルゲージ(借入金)を返済していくが、賃貸料収入も所得として算入できるため、モルゲージの資格要件は比較的容易に満たすことが可能である。

所有者は、低中所得者の家賃補助やモルゲージの優遇措置、都市開発アクションエリアプログラム(Urban Development Action Area Program: UDAAP)に基づく固定資産税の減免などを受けることができる。この際のNYCHPの役割は、市の土地売却の受け皿になるほか、住宅建設全般にわたるコーディネイト、建設費の補助金を連邦、州、市などから調達することと、住宅を分譲し、所有者が入居者の家賃補助などを受けられる場合にはその申し込みなどを行うことなどである。

 このようなNPOに様々な補助を与え、住宅建設を行わせる方法は、近年急速に増加してきている。この場合も様々な優遇措置が与えられている。

(銀行は連邦が定めるCommunity Reinvestment ActCRAに基づき、地域であげた利益を、地域に再投資する形で、こうしたプロジェクトに、低利融資を行う。)

<アメリカにおける住宅政策の特徴>

 以上で挙げたのはほんの一例であるが、これらのプロジェクトなどを通して、以下のようなアメリカの住宅政策の特徴が見て取れる。

1)具体的な事例にはなかったが、公営住宅は1960年代から80年代まで、アメリカの重要な住宅政策の一つであった。しかし、1990年に制定されたアフォーダブル住宅法によって、公営住宅を民間のノンプロフィット団体などに譲渡し、それを低中所得者向けの分譲住宅化を目的とするHOPE I プログラム(Homeownership and Opportunity for People Everywhere)が始まった。また、1992年からHOPE VIという、公営住宅の大規模な再開発プログラムも開始されている。このHOPE VIは単に住宅のリノベーションにとどまらず、老朽住宅の取り壊し、コミュニティ環境のレベルアップ、改善、住民の職業訓練・斡旋、などを含むプログラムが全米の各都市で始まっている。このHOPE VIは各地で公営住宅の質的改善に大きな役割を果たしている。さらに一部の都市では、公営住宅の民間への売却、管理運営の民間委託などの具体化も始まっている。

2)公営住宅のように、1ヶ所に低中所得者層を集めるのではなく、一般の住宅の中に混在させる考え方になってきている。そのため、民間の住宅建設に対し、様々な補助や税の優遇措置などを与え、民間が低中所得者層向けのアフォーダブル住宅を建設しやすい環境を創出している。また、民間投資家をアフォーダブル住宅建設に参加させるための様々な仕組み(免税債、出資に対する税控除など)も用意されてきている。

3)アメリカにおける公的施策住宅の賃貸住宅の中で、最も大きなシェアを持つのが、低中所得者に対する家賃補助であるが、その家賃補助も、トランプのリバーサイドサウス開発のような新規プロジェクト開発に対するものと、低中所得者が一定の基準を満たしていれば自由に住宅を選べるものとがあるが、この2つでほぼ50%のシェアを有している。家賃補助は一種の直接補助であるが、厳密な資格要件をもとに補助を実施している。この活用により、民間の参入を促している。

4)NPOへの補助、役割が急速に高まっている。荒廃した都心部などで、行政などが直接住宅整備に乗り出すのではなく、NPOにその役割を求め、NPOが資金の調達、様々なインセンティブの確保、住宅建設に関わるコミュニティとの調整、住宅のマーケティング等々を行ってきている。

5)住宅税制は以前は持家に対する優遇税制が大部分であったが、最近では、低所得者向け住宅に関する税控除の制度もでき(Low?Income Housing Tax Credit: LIHTC 1993)、これも上記のように民間資本をアフォーダブル住宅に向かわせる方向に向いている。また、低所得者の住宅取得を可能にするためのボストンやハーレムのような仕組みも考え出されるようになってきている。さらに多くの都市で、プロジェクト単位で固定資産税の減免を積極的に進めており、そのことが一定割合のアフォーダブル住宅を供給する大きなインセンティブになっている。

6)事例ではあまり良い例は無かったが、住宅金融はアメリカの住宅政策上、重要な要素を占めている。日本と異なり民間金融機関による貸付を基本に置き、その上で、政府による保証や金融機関への資金供給、モルゲージの証券化、モルゲージ市場への介入などが基本となっているが、ここでも極力、直接的な関与から間接的な関与に移行しつつある。ただ、1980年代後半のような金融逼迫の折には、消費者保護の立場から、直接介入の必要性が大きく高まってくる場合もある。

 以上のように、アメリカの住宅政策は、政府の直接関与の時代から、間接関与の時代へと大きく変革しつつある。それにより小さな政府を目指すことが可能となりつつあるが、一方で民間活力を効果的、効率的に引き出すための戦略的な住宅政策が求められているといえよう。ただ、こうした努力にもかかわらず、アメリカの施策住宅を必要とする世帯の比率は一貫して増加しつづけており、更なる新たな努力が求められている。

<おわりに――日本の住宅政策との比較>

 現在の日本における住宅政策の枠組みは、1950年代にほぼそのフレームができ、低所得者向けには公営住宅、持ち家政策の根幹をなす公庫融資、そしてその間に位置する都市勤労者層を対象とする公団住宅が基本的な枠組みである。この枠組みの中で、アメリカと日本が大きく異なるのは以下の点である。

・アメリカは公営住宅の新規建設をストップし、修復プログラムを実施しており、一部は修復後民間に所有させたり、管理運営を民間に任せたりする方向が具体的に模索されている。日本も多くの公営住宅で修復プログラムは進められているが、新規建設も依然として進められており、民営化の動きはまだない。

・アメリカでは低所得者層を同じところに集めるのではなく、分散的に市街地の中に組み込むために様々な方法が模索されている。しかし、日本では公的住宅政策の中に、居住階層混合の考え方はない。ただこれは、アメリカの場合、公営住宅がスラムとなって、犯罪等の巣窟となったという背景がある。日本の場合、それほど深刻な問題にはなっていないので、そうした考え方は生まれていない。逆に日本では、例えば1つの住宅棟に居住階層が混合して住むというような考え方は受け入れられにくい。

・アメリカの住宅政策の場合、低中所得者向けの住宅は、一旦マーケットに乗せた上で、低所得者達の入居による現実とのギャップを補助や、優遇措置で補う形になっている。従って、民間のディベロッパーや投資家が中低所得者住宅に投資することが現実に可能となっており、政府が多大な直接財政支出をしなくても、住宅の整備が進められる構造ができつつある。

・アメリカの住宅政策においては、補助や融資などが政府財政の中から直接的に投じられているので、それを小さくしながら、住宅政策の後退を招かぬよう、民間の参入を促すような巧みな制度づくりをしてきた。日本では、すでに公団住宅や公庫融資において、郵便貯金などを資金源とする財政投融資制度や民間融資などによって資金が調達されており、民間資金の活用という点では、日本の方が先んじていたといえる。しかし、そのフレキシビリティや、市場での自由性、流動性においては、最近のアメリカにおける政策のほうが上回っている。

・日本の住宅税制は、アメリカと同様の個人レベルでのモルゲージの利息分を、所得から控除できるというものであるが、アメリカではさらに固定資産税の減免をプロジェクト単位でおこなうなど、ダイナミックな税制度の運用が見られる。

 日本とアメリカの住宅事情は異なるのと、背景となる社会システムも異なるので、必ずしもその良し悪しを評価するのは難しい。しかし、アメリカの場合、いずれの施策を見ても、様々な局面で民間のパワーやNPOを活用できるような制度を創出しており、政府の役割を大きく変化させてきている。日本も、公営住宅や公団住宅、公庫住宅などにおいて、今一度そのあり方論を再検討しても良いのではないかと考える。

例えばそれは単に、これまでの公団分譲住宅が民業圧迫であるから、公団は分譲住宅から撤退せよというような議論ではなく、公団には民業ではできないNPO的な役割を期待するとか、例えば低中所得者の持ち家促進のためのプログラムを推進する役割を付与するとかいった、新たな枠組みづくりが必要になってきているといえよう。今その議論をすることが日本には求められている。

 

(C) 2001 Policy Research & Analysis Network All Rights Reserved 無断転載を禁じます。